懺悔
2002年6月3日ある、無能なる少年がいた。
少年は気が弱いが、人を愛していた。
常に心は温かく、人を憎むことを知らなかった。
中には少年を馬鹿にする者もいた。
そしていじめられもした。
それでも、彼は人を愛し続けた。
彼は一つの夢を持った。
人を救いたい。
愛し続けたい。
自分が生きる意味を持ちたい。
そう願った。
少年が青年になる時、
それを叶える為、必死に勉強するようになった。
そのうち、彼が気がつかない間に
周りは自分よりも無能になっていた。
そして、周りには自分を馬鹿にする者は
もはやいなくなっていた。
その青年は自分を優秀だと思った。
そして、努力のない人間を見下していた。
つまらないやつだと、
世の中に役に立たないやつだと、
そう思っていた。
その感情は次第に彼を支配し、人を愛せなくなっていた。
人の持つ醜い部分が見えるようになってしまった。
小さなプライドも、見栄も、劣等感からくる自己弁護も、
全てが愚かしく見え、全てが虚しく見えた。
これが大人になることなら、なりたくはなかった。
いっそのこと、馬鹿な自分のままでいたかったと、
そう思った。
彼は太宰治を好み、
「アルジャーノンに花束を」に共感するようになった。
いつしか、青年は努力をすることすら空虚に感じた。
そのせいで追い込まれたりもした。
他人にではない。
自分に。
いつしか、自分は失敗の許されないのだと
考えるようになった。
失敗のしない実力を身につける前に
詭弁になり、言い訳をするようになった。
自分を欺き、他人すら欺いた。
嘘。嘘。嘘。
でも、周りは分かっている。
その青年が、自分を誇示したがっていることを...
確かにある実力も、その気性ゆえ一部の人にしか認められず、
人に笑われるようになった。
それでも、青年は密かに夢を持っていた。
それでも、青年は人を愛したかった。
それでも、人を救いたかった。
彼は決意し、努力した。
全ての中傷や嘲笑にも耐えて、プライドを捨てて
目もくれず努力した。
夢の為に。
でも、彼の努力は愛する人によって阻まれることとなった。
彼はいつしか愛することも
夢を持つことも辞めてしまった。
夢を持つ自分が、ナルシズムに思えてしまう。
それは他人は冷静と評するだろうか?
その通りと言えるのか?
否
それは心が乾いた人の感じる様であろうと思う。
実際、青年の心は乾いていた。
隠しきれない劣等感を、
優越感を以って覆い、
ナルシズムで自分すらを欺いていながら、
自分では気がついている...
どうしようもない空虚な感情に
押しつぶされそうなのを必死で耐えながら
もがいている。
そんな自分は檻の中で力を誇示するライオンに近いのだろう。
檻の外から嘲笑う者に、必死でプライドを守っている。
人の優しさも受け止められず、
それでも、
人を愛したいと、救いたいと願えるチャンスが欲しいと
ただ毎日祈り続ける...
そうして、何の罪悪感もないまま、昨日と同じ日を繰り返す。
努力を忘れた蟻のように...
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